ゆきの子供達 第十章 家老の調査報告

数日後、家老は若殿に報告しました。「若殿さま、例の茶道家を調べ尽くしました。十五年ぐらい前、ある老婆が赤子だった孫娘とある小さな村に落ち着きました。その後、そこで静かに二人で貧しい生活を送りました。数週間前、老婆は死んで、孫娘は村を去りました。

「その日、ある漁師がその村からこの町まで来る途中で、その娘と出会いました。娘は漁師の網を繕って、漁師は娘と貝を分けました。娘は、そのときは毛の腕飾りを手首に巻いていませんでした。

「その夕べ、ある服の商人が(温泉の女将の弟なのです)その道の途中で娘と出会いました。娘は毛の腕飾りを手首に既に巻いていて、貝の中で見つけたという真珠と家系図を持っていました。商人は娘に女将宛の手紙を渡しました。

「次の日、女将への手紙を持ち、毛の腕飾りを手首に巻いていた娘は、この町の門に来ました。温泉への道順を聞きました。その後間もなく、毛の腕飾りを手首に巻いていた娘は温泉に来て、商人からの手紙を女将に渡しました。女将は娘を茶道家として雇いました。

「商人達は皆、娘がゆきと名乗ったことを確認しました。狐と山賊の実在は確認できません。しかし、漁師が娘と会った砂浜と商人の野営地との途中に、焚き火の灰と貝が見つけられました。

「ご存じかもしれませんけど、十五年ぐらい前、ある大名が倒されて城が火事で焼け落ちてしまいました。その大名には、有名な茶道家の母親と赤子の娘がいました。その時、母親と娘は火事で死んだと皆思いましたけど、遺体が全く見つけられませんでした。大名の母親の名前と若い茶道家の祖母の名前は同じです。また、大名の家紋は若い茶道家の家系図にあります」と家老は言いました。

「面白い。父上に教えた方がいい」と若殿は言いました。それから二人は殿さまのところに行って、家老は報告を繰り返しました。家老が終った後で、殿さまは「そなたは、その娘に興味があるのか」と若殿に聞きました。

若殿は「もし父上が了承をしていただければ、茶道家と結婚するつもりでございます」と答えました。

「その茶道家を一目見てみたいと思う」と言いました。

その夕べ、ゆきは殿さまの部屋に招かれました。「はじめまして。温泉の茶道家、ゆきと申します。どうぞよろしくお願いします」と言いました。

殿さまは「そなたの風貌、、、。うむ、懐かしい」と呟きました。

ゆきがお手前をした後で、殿さまは「そなたのおばあさまにうりふたつだ。彼女はよく教えたものだ」と言いました。

ゆきは「左様でございますか。殿さま、よくまあ私の祖母をご存知でしたね?」と聞きました。

殿さまは「そなたのご両親も亡くなる以前存じ上げておった。そなたの父上は偉大な人物で、わしと友達だった」と言いました。

「祖母は親については何も話しませんでした。教えてくださいませんか」とゆきは尋ねました。

「うむ。しかし、まず息子が申したいことがある」と殿さまは言いました。

若殿は「ゆき姫、もし私と結婚してくだされば、必ず幸せにします」と言いました。

「いえ、私は姫ではございません。私のような女は若殿と結婚できません。分かりません」とゆきは言いました。

「君の父上は大名だった」と殿さまは言いました。

「なんと言ったらいいか…。けれどももし若殿さまがそうお望みならば、思し召すままに」とゆきは言いました。

それから三人で長らく喋りました。

最初へ 前へ 次へ 最後へ  目次へ  ホームへ

Copyright © 2006-9, Richard VanHouten RSS Feed Valid XHTML 1.0 Strict Valid CSS!