ゆきの子供達 第四十七章 女将との会話
次の日、ゆきが朝ご飯を食べた後、女将は、ゆきの前に座り、「昨日は、気が動転なさっておられたようですね。何かお困りでしょうか。私に出来ることはございませんか」と、優しく訊ねました。
ゆきは、「元々女将さんの下で働いていたのですから、二人だけの時は、気を使わなくても結構ですよ」と言い、下を向いて溜め息をつきました。女将がゆきの言葉に頷きながらも「ご遠慮なさらず、何でもおっしゃってください」と言うと、ゆきは窓の外を指差し、「外に出ている間は自由を感じていました。でも城内にいる時は、まるで籠の中の鳥になった気がします。何かをしようとすると、すぐに反感を買ってしまいますし…。狐子ちゃんがここにいた時は、だんだんよくなっている感じがしていたのですが、狐子ちゃんは狐どのと一緒に遠くへ行ってしまいました。私が城に帰ってきた時、笑顔で迎えてくれた人は誰もいませんでした」と、悲しそうに言いました。
女将が「その狐子さんという方は、どんな人なのですか」と尋ねると、ゆきは含み笑いをしました。「実を言うと、狐子ちゃんは人ではないんです。狐どのの娘なんです。人間のことにすごく興味があるから、常に人間の姿をしていますけどね。とても明るい女の子です。村を訪ねる途中で鬼と遭遇したのですが、狐子ちゃんは狐の姿に戻って、たった一人で勇敢に鬼と戦ったのですよ」
女将は、「狐子さんが狐の姿で鬼と戦ったのですね。噂では、ゆき様が狐に化けて鬼を退治なさったと…」と言った後、自分の部屋に行き、日記を持って戻ってきました。「私が城で働き始めてから、ゆき様についてのお噂を耳にするたびに、それらをこの日記に書いておきました。どうぞお読みください」
それからゆきはその日記に書かれた噂を読み始めました。順に目を通しながら、「この意味がさっぱり分かりません」とか、「この部分は狐子ちゃんのことです」とか、「これは私のしたことですが、事実と全く違います」などと女将に言いました。