ゆき達が城に向かう途中、狐に会いました。ゆきは「狐どの、こんにちは」と言いました。
狐は「こんにちは、ゆきどの。申し訳ありませんが、狐子と一緒に参らねばなりません。狐の評議がありますので」と、ぺこりと頭を下げました。
ゆきは、「狐の評議ですか。狐子ちゃんに何か問題でも起こったのですか」と、心配そうに訊ねました。
狐子は、「別に、心配しないで。きっと鬼を退治した時のことね。すぐに帰って来られると思うわ。それでは行ってきます」と言った後、狐の姿に戻り、父親と一緒に歩き出したかと思うと、まるで風のような速さで消えてしまいました。
しばらくするとゆきたちは城下町に着きました。老若男女、町中の人々が道端に並んで待っていました。その中を通って城へ向かう間、大きな喝采が止むことはありませんでした。打って変わって、城の中庭はとても静かでした。ゆきは城の窓という窓から悪意に満ちた目で眺められているように感じました。
そんな時、ゆきはふと見覚えのある人が、自分に向かって歩いて来ていることに気づきました。ゆきは嬉しさのあまり、大きな声で「女将さん!来てくれたのですね!やっと願いが叶いました!」と言い、泣き出してしまいました。
女将は、「ゆきさま、お待ちしておりました。どうか落ち着いてくださいませ。身重のお体ながら国のあちらこちらにお出かけなさって、さぞやお疲れでございましょう。馬からお降りになって、お部屋にお戻りください。湯殿の支度を整えてございます」と、ゆきが馬から降りるのを手伝い、部屋へ連れて行きました。