次の朝早く、廊下から声が聞こえました。「ごめんください。狐一さまのお着物を持ってきました」
琵琶法師は、少し待つように言いながら、自分を急いで着替え、狐一に人間の姿になるよう促し、そしてすぐに障子を開けました。そこには着物を手にした広子がいました。
「どうぞこれをお召しください」と立ち上がって、それを琵琶法師に手渡すと、後ろに立っている狐一の方をちらりと見ました。「あなたは人間のお姿をした狐一様でしょうか。素敵!凛々しい!あの、狐一さま、お着替えが終わりましたら、ご家老の執務室にお連れします」
琵琶法師は着物を広げて、顔を赤くした狐一に見せました。「これは少し小さすぎるかもしれませんね」
「うるさい」と言すと、狐一は広子の目の前でその着物姿に化けました。もちろん、化けた着物はちょうどいい大きさに変わっていました。
「まあ!私もそんなに簡単に着替えができたらいいのに!」と手を胸の前に当てて広子は叫びました。「じゃ、ご家老のところに参りましょう」狐一の手を取ると、部屋から出て行きました。
二人の姿が消えるまでに、琵琶法師はあっけにとられて彼らを眺めていました。そして、首を振りながら、「昨夜のまじないが効きすぎたかな」と呟きました。