第十六章
鬼
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次の日、大名は忍者の長と家来と一緒に山へ向かって馬を走らせていました。間もなく岩屋の入口に着きました。
大名は「ここで待て。どんなことが起こっても、着いてきてはいけない」と言いました。
「大名さま、その場所は危ないようです。誰かお供を連れて行った方がいいのでは…」と、長が勧めました。
「この岩屋の住人の力は、私を殺したければ、兵が全員でかかってもかなわないほどのものだ。このより先は、わし一人で行かなければならん」と大名は答えました。
それから大名はろうそくを点して、岩屋の入口に入りました。間もなく大きな洞窟に来ました。いきなり、太い声が聞こえました。「俺さまの住まいに入って来たのは誰だ?」
大名は深く会釈しました。「鬼さま、昔、力をお貸しいただいた者でございます。もう一度手伝ってくださいませんか」と言いました。
鬼は「毎週牛を一匹近くの牧場から取っている。別な味が欲しい時に、娘を一匹百姓の家から取っている。今度手伝ったら、何をくれるのだ?」と言いました。
「前の大名の娘はまだ生きていて、隣の国の大きな町に住んでいるようです。娘と結婚するために、彼女を誘拐してくださいませんか。娘さえ手に入るならば、町を全部滅ぼしても構いません」と大名は答えました。
「なぜ人間の家来を使わないのか」と鬼は聞きました。
「実は、娘は狐で守られているようです。領地にいた忍者が誘拐しようとしましたが、狐が助けてしまいました」と答えました。
「狐?煩わしい奴等だ。昔から狐が大嫌いだ。よしじゃあ、やってみよう」