第六十六章
晩の会話
一日かけて、家老はゆきについて詳しく話しました。女は詳細を知りたがり、家老の話を何度も遮りました。
しばらくして、家老はようやく女の質問攻めから解放され、家の外で待っていた八狐と一緒に谷へ戻りました。
家老は、自分の部屋のそばに赤毛の女が座っているのに気付くと、足早に近寄りました。「狐子さん!ただいま戻りました!」
狐子は立ち上がりました。「お帰りなさい。どこに行っていたの?」
「あなたのおばさまにお会いして、ゆき様のことを一日中話していたんだ。質問攻めにされたので頭が痛くなるほどだったよ。明日、また来るように言われたよ。疲れたよ」と家老は言って、腰を下ろしました。
狐子も家老と向かい合わせに座りました。「どこで会ったの?人間の姿をしていると、伯母ちゃんの住処に入ることはできないはずよ」
家老は谷の向かい側を指差しました。「あそこの家だった」
「へえ…伯母さんは誰も入れたがらなかったのに!」
「私は入れてもらえましたよ…今日はむしろ、おばさまから招かれたんだ。…でも、この着物を着せられたんだよ。ところで、狐子さんの方はどんな風に過ごしたの?」
「一日中琵琶法師さんがおまじないをするのを見てたの。彼がこのおまじないを覚えてるかしらとか、このおまじないを教えてあげたかしらとか、はらはらしてたわ。自分の試験よりも大変だったわ」
「試験はいつまで?」
「いつまでかしら?たいてい、一日で終わるけれど、別の流派のまじないの本当の能力を見分けるのは難しいから。特に今回、彼は独学…ところで、父上が今晩、あなたと食事をしたいと言ってた。すぐに行かなくちゃ」と狐子は言うと立ち上がりました。
「へえ?どこに?お父様の住処には入れないだろうね」
「住処の外に天幕を張ったのよ。行きましょう!」と狐子は言って、家老の手を取り立ち上がらせました。
二人は、日が落ちてすっかり暗くなった谷を歩き、狐子の住処へと向かいました。