第四十五章
広がる噂
ゆきたちが家を建て直したり、稲を刈り入れたりしているうちに、だんだん他の村や城下町から手を貸す者たちが現れ始めました。一週間ほどで米の収穫が終わり、ゆきと若殿は村の今後を話し合いました。そして、誰がどの田んぼを受け継ぐか、誰がどの孤児を育てるか、といったこと一つ一つを決めました。
若殿一行についての話が、国中に伝わりました。「殿が、またもや鬼の首を切り落とした。まさに豪傑と呼ぶに相応しいお方だ!」とか「殿とゆきさまが、鬼に襲われた村を再興なされた。真の名君だ」などと、農民たちは口々に褒め称えました。
一方、城の中では、ゆきの行動について「彼女は田んぼで働いているそうだ。百姓の心が染み付いているのだろう。全く我等が殿には似つかわしくない妻だ」とか「なんと、殿を泥まみれで働かせたそうだ。魔術を使う物の怪に違いない」とか「狐の姿に化けて、鬼と戦ったそうだよ。かねてからの噂通り、彼女は化け物なの」などと、悪い噂が広まっていました。
女将は日記にいろいろな噂を黙々と記録し続けました。
そしてついに、ゆきたちはその村の復旧を終え、残った村もすべて訪ね、城へ帰ってきました。