第五章
助けて!
(この章を聞きたい場合は、クリックしてください)
次の朝、商人は手紙をゆきに渡して「都に着いた後で、温泉に行ってこの手紙をそこの女将に渡してください。その人は私の姉なのです」と言いました。
「分かりました。必ずその手紙をお姉さんにお届けします」とゆきは言いました。
それからゆきは都へ向かい、商人は別の方へ行きました。
間もなくゆきは浪人らに出会いました。
「こんにちは、お侍さま。私はゆきと申します」とゆきは浪人の頭に言いました。
「ふふふ。なんでそんなに美しい娘がこんな道を旅しているのかな」と頭は言いました。
「幸せを探すために都に行くところです」とゆきは言いました。
「今日はついてるぞ」と頭は言ってゆきを掴みました。
「そうだな」と他の浪人が言いました。
「いや!侍じゃない!山賊だわ!手を離して!助けて助けて助けて!」とゆきは叫びました。
あっという間に一匹、二匹、ついには百匹もの狐が浪人の間に現れて、浪人を咬んで躓かせました。
「畜生!妖怪が!逃げよう!」と浪人は言いました。
「このお嬢さんは俺が守っている。貴様のような奴は彼女に指一本触れてはならんぞ」と狐は浪人の頭に言いました。
それから浪人は皆狐に追われて逃げていきました。
「狐さま、助けてくださってどうもありがとうございます」とゆきは言いました。「真珠をもう一粒差し上げましょうか」
「そんなに貰うことはできませんよ」と狐は答え、「あともう二回まで私を呼んでも構いません。さあ、気を取り直して、旅を続けなさい」と励ましました。
「どうも、ありがとうございます。それでは失礼します」と言って、都へと歩き始めました。