第三章
狐との出会い
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しばらく行くと、ゆきは焚き火のそばに座って、兎を焼いている狐に出会いました。
「こんにちは、狐さま。私はゆきと申します」とゆきは言いました。
「こんにちは、ゆきちゃん」と狐は答えました。
「美味しそうな匂いがしますね。私はお腹が少し…すみません、狐さま。よろしければ、その兎を分けていただけませんか。私は貝を少し持っているのですが」とゆきは言いました。
「いいですよ。貝を分けてくれれば、私も兎を分けてあげます。ところで、どうしてそんなに美しいお嬢さんがこのような道を一人で旅しているのですか」と狐は聞きました。
「幸せを探すために都に行くところです」とゆきは答えました。
「気を付けて行くのですよ」と狐は言いました。
「はい。ありがとうございます」とゆきは答えました。
それからゆきは貝を開け始めました。驚いたことに、それぞれの貝の中に大きな真珠が入っていました。
「あの、狐さま、この貝の中に入っている真珠もお受け取りください」とゆきは言いました。
「そんなにもらうことはできません」と狐は答えました。
「一粒だけでも受け取ってください」とゆきは言いました。
「あなたのような気前の良い人間には、これまで一度も会ったことがありません。それでは、真珠を一粒と、数本の尻尾の毛とを交換しましょう。もし身の危険を感じるようなことがあったら、この尻尾の毛に触れながら『助けて』と三回唱えてください。そしたら、私たち一族はあなたを助けるためにそこに現れます。三度までなら助けてあげましょう」と狐は十本くらいの毛を尻尾から抜き取りながら言いました。
「そんな大切なものをいただくことはできません」とゆきは言いました。
「たいした物ではないですよ」と狐は言いました。
「そこまでおっしゃるのなら、ありがたく頂戴します」とゆきは真珠と尻尾の毛を交換しながら言いました。
兎と貝を焼きながら、ゆきは残りの真珠を懐に入れました。そして尻尾の毛を結って腕飾りを作り、自分の手首に巻きました。
二人が兎と貝を食べた後でゆきは「ご馳走さまでした。いただいたばかりで申し訳ないのですが、そろそろ失礼します」と言って町へ向かいました。